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複素関数

複素数

虚数単位 を満たす数である。複素数は実数 を用いて と表される。複素数全体の集合を で表す。 にユークリッド空間 の位相を入れたものを複素平面と呼ぶ。複素数 に対して、以下を定義する。

  • 実部:
  • 虚部:
  • 共役複素数:
  • 絶対値:
  • 偏角: (ただし を満たす実数)

これらには以下の基本的な性質がある。

【定理】複素数の基本的な性質

主張

証明

  1. とおくと、

    となる。よって1が成り立つ。

  2. とおくと、

    となる。よって2が成り立つ。

  3. 2の結果を用いれば3も同様に示される。

【定理】ド・モアブルの定理

主張

, に対して、

が成り立つ。

証明

数学的帰納法で示す。
のとき明らか。 のとき成り立つと仮定する。このとき、

となる。よって任意の について成り立つ。

複素関数

領域 上の関数 を複素関数と呼ぶ。複素関数 は実2変数関数 を用いて

と表される。ここで をそれぞれ の実部関数、虚部関数と呼ぶ。

複素数平面 に無限遠点 加えて、 を考える。これをリーマン球面と呼ぶ。 空間を考えてみよう。 を中心とした半径 の球面を とする。この球面 の北極点 を通る空間上の直線を考える。このとき, 平面と並行な直線は球面 と北極点で接するが、それ以外の直線は球面 と北極点以外にもう1点 で交わり、 平面とも1点 で交わる。このとき、点 と点 を対応させる写像を考える。するとこの写像は球のうち北極点以外の部分と 平面を1対1に対応させることができる。この球こそがリーマン球面であり、 平面こそが複素数平面である。北極点は無限遠点に対応する。つまり、 は球面 と同相である。

を考えるとよいことがある。

  • 無限大への発散や無限大を用いた計算を扱うことができる。
    のような計算が可能になる。
  • 有理型関数の特異点をすべて扱うことができる。 例えば で特異点を持つが、リーマン球面上では と定義できるため、特異点を1点にまとめて扱うことができる。
  • 複素関数の位相的性質を扱うことができる。 複素関数 は連続写像として扱うことができるため、位相的議論が可能になる。

級数

複素数列 に対して、級数 を考える。部分和 が収束し、極限 が存在するとき、級数 収束するといい、その極限を級数の和と呼ぶ。

級数 は級数 が収束するとき、絶対収束すると呼ぶ。絶対収束する級数は収束する。

【定理】比較判定法

主張

非負実数 による級数 が収束し、かつ

が成り立つとき、級数 は絶対収束する。

証明

級数 の部分和を とおく。このとき、 は非負実数なので部分和 は単調増加数列となり、収束先を とおくと、

である。 は非負整数なので、部分和 は単調増加数列であり、上に有界である。よって部分和 は収束し、級数 は絶対収束する。

べき級数

複素数 に対して、形式的に級数

を考える。この級数をべき級数と呼ぶ。べき級数は中心 を持つ。べき級数の各項 は複素関数であるため、べき級数全体も複素関数とみなせる。

ある領域 上の全ての点 についてべき級数 が収束するとき、べき級数は領域 上で各点収束すると呼ぶ。任意の点 について、 が収束するとき、べき級数は領域 上で絶対収束すると呼ぶ。

【定理】比較判定法

主張

複素数列 に対して、ある が存在して

が収束するとき、べき級数

上で絶対収束する。

証明

仮定より、ある が存在して

が収束する。ここで、 を満たす複素数とする。このとき、 とおけば である。したがって、任意の について

が成り立つ。 が収束するとき、実数の比較判定法より、 は収束し、べき級数

は領域 上で絶対収束する。

収束半径とは、べき級数

に対して、以下のように定義される実数 である。

  • に対して、べき級数は領域 上で絶対収束する。
  • に対して、べき級数は領域 上で各点収束しない点が存在する。

つまり、収束するような最大の半径が収束半径である。収束半径は以下のように求められる。

【定理】収束半径の公式

主張

べき級数

の収束半径 は以下の式で与えられる。

ただし、 とする。

証明

まず、 とおく。

  1. のときを考える。このとき でない。すると、ある が存在し,
    である。また であるから、 となる は有限個しかないため、任意の に対し、十分大きい が存在し
    が成り立つ。これらを用いれば、
    となる。さて、 は無限等比数列の和であり、 であるから収束する。したがって、それに高々有限個の項を加えた
    も収束する。よって比較判定法より、べき級数 のとき絶対収束する。
  2. のときを考える。このとき、 でない。 の場合をまず考える。このとき、全ての を考えることになる。すると、
    となる 、つまりは によらず常に無限個存在する。 このとき、
    となるため、べき級数 はどんな についても各点収束しない。次に の場合を考える。このとき、ある が存在し、
    が成り立つ。また、 であるから、任意の に対し、
    となる は無限個存在する。これらを用いれば
    となる が無限個存在する。したがって、
    となる。右辺は無限等比数列の和であり、 であるから発散する。よってべき級数 は各点収束しない。

以上より、収束半径 で与えられることが示された。

【定理】

主張

べき級数

に対し、

が存在するなら収束半径 に等しくなる。

証明

定義された を用いて証明を行う。

  1. のときを考える。このとき、ある が存在し である。極限の定義より、十分大きい
    が成り立つ。これを用いれば、任意の について
    となる。これを繰り返し用いると, とおけば に対して
    となる。ここで、 の定義から であるため、右辺の無限等比数列の和は収束する。したがって、比較判定法より、べき級数 のとき絶対収束する。
  2. のときを考える。このとき、ある が存在し である。極限の定義より、十分大きい
    が成り立つ。これを用いれば、任意の について
    となる。これを繰り返し用いると, とおけば に対して
    となる。ここで、 の定義から であるため、右辺の無限等比数列の和は発散する。したがって、べき級数 のとき各点収束しない。

以上より、収束半径 に等しいことが示された。

代表的な複素関数

基本的な四則演算に加えて、実関数では指数関数や三角関数、対数関数を考えてきた。これらが、複素関数としてはどのように定義されるかを示す。

指数関数

複素数 に対して、複素指数関数

と定義する。このとき、このべき級数は収束半径 を持つため、任意の複素数 に対して定義される。この定義によって指数関数にあった

といった性質も持ち、べき級数に実数を代入しても値は実数の指数関数と一致する。それぞれの証明は省略する。より単純に書けば, とおくと、

と表される。かの有名なオイラーの公式はこの式から導かれる。

三角関数

複素数 に対して、複素三角関数

と定義する。このとき、これらのべき級数は収束半径 を持つため、任意の複素数 に対して定義される。この定義によって三角関数にあった

といった性質も持ち、べき級数に実数を代入しても値は実数の三角関数と一致する。それぞれの証明は省略する。また、三角関数は以下のように指数関数を用いても表される。

こちらを三角関数の定義とすることもある。

対数関数

対数関数を指数関数の逆関数として定義しようとすると、虚部について多価性が生じる。

このため、主値を決める単価な偏角 を用いて、複素対数関数

と定義する。 を満たす を一意に返すものである。よく、 と定められる。ここで は実数の対数関数である。すると、

が成り立ち、指数関数の逆関数となっていることがわかる。ただし、 では対数関数は定義されないことに注意されたい。

微分

複素微分

複素関数 が点 微分可能であるとは、極限

が存在することをいう。なお、 である。このとき、 の点 における微分係数と呼ぶ。関数 が領域 上の任意の点で複素微分可能であるとき、 は領域 上で微分可能であるという。 上で微分可能であるならば、 導関数と呼ぶ。複素関数では微分可能に対してとても良い性質がふずいするので特に正則と呼ぶことが多い。

【定理】複素微分の基本的な性質
主張

複素関数 が領域 上で微分可能であるとき、以下が成り立つ。

  1. (ただし )
証明

各性質は実関数の場合と同様に示される。

コーシー・リーマンの方程式

複素関数 と表す。ただし、 である。ここで、 はそれぞれ の実部関数、虚部関数である。関数 が正則であるための必要十分条件は、以下の2つである。

  1. が偏微分可能である。
  2. 偏微分係数がコーシー・リーマンの方程式

を満たす。

これの証明を示そう。

【定理】コーシー・リーマンの方程式
主張

複素関数 が領域 上で正則であるための必要十分条件は、以下の2つである。

  1. が偏微分可能である。
  2. 偏微分係数がコーシー・リーマンの方程式

を満たす。

証明

が領域 上で正則であるとする。このとき、 について偏微分可能であるので

が成り立つ。これは 方向についての偏微分であるが、 を虚軸と並行な方向に微小変化させたときにも同じ値になるはずである。すなわち、 に対して

が成り立つ。これらが等しいことから、コーシー・リーマンの方程式が導かれる。

逆に、 が偏微分可能で、コーシー・リーマンの方程式を満たすとする。このとき、十分小さい変分 に対して、

と表せる。ここで、 のとき を満たす項である。同様にして、

と表せる。ここで、 のとき を満たす項である。これらを用いれば、

が成り立つ。最後の極限は微分の定義そのものの計算であり、極限値が存在したので は点 で微分可能であることが示された。よって は領域 上で正則であることが示された。