ローラン展開
ローラン級数
ローラン展開とは、テイラー展開を拡張したものである。 を 上で定義された関数とする。ある について
が成り立つとき, は でローラン展開可能であるという。 をローラン級数の主部, をローラン級数の正則部という。上の式からローラン展開はテイラー展開ができない場合でもできることがあることがわかるだろう。また、 で が定義されてなくてもよい。実際、主部がある場合, は で定義されない。
主張
を を中心とする半径 の円周とし、 とする。 を と の円環領域 上で正則な関数とする。このとき、 は についてローラン展開可能であり、ローラン展開を
と書くと、係数 は 内で反時計回りの単純閉曲線 について
で与えられる。
証明
からそれぞれ1点ずつ 取り、 から を辿る経路を とする。このとき, から反時計回りに進み、 を一周し、 を辿って に行き、時計回りに を一周し、再び を辿って に戻る経路 は を囲み反時計回りである。したがって、コーシーの積分公式より について
ここで、 であるので,
と書ける。ここで、 について考えると
である。この関数は各点収束するので、積分と和の順序を入れ替えられる。したがって、
となる。同様に についても
であり、同様に積分と和の順序を入れ替えると
となる。これらを の式に代入すると
ここで、 は のとき , のとき である。したがって、ローラン展開の係数 は
で与えられる。特に、 は が正則である領域内の閉曲線であればどれでもよいので、 内で反時計回りの単純閉曲線 を取れば
が成り立つ。
特異点の分類
特異点とは、関数 がある点 で正則でないまたは定義されていないとき、その点 のことである。そのうち、 の近傍が存在し 以外が正則であるような特異点を孤立特異点という。孤立特異点 の近傍で がローラン展開可能であり、
と書けるとき、孤立特異点 は以下の3種類に分類される。
- 可除特異点: 主部が存在しない場合、すなわち である場合。このとき、 は で定義されていなくても、 と定義することで正則関数に拡張できる。
- 極: 主部が有限項である場合、すなわち正の整数 が存在して である場合。このとき、 であるなら は で 位の極を持つという。 は が ではない最小の である。
- 真性特異点: 主部が無限項である場合、 は で真性特異点を持つという。
主張
を 上で定義された正則な関数とする。ただし、 は孤立特異点である。このとき、以下の条件の対はそれぞれ同値である。
- 可除特異点
- が可除特異点
- 極
- が 位の極
- 真性特異点
- が真性特異点
証明
-
が可除特異点であるとする。このとき、
でも正則に拡張できる。正則なら連続であるので、
が存在する。逆に、 が存在するとする。このとき、 のローラン展開において、項ごとの極限を考えるとである。 が有限値であるためには である は存在してはならない。したがって、 であり、主部は存在しない。よって、 は可除特異点である。
-
が
位の極であるとする。このとき、
である。なお、 である。したがって、が存在する。逆に、 が存在するとする。このとき、ローラン展開においての項ごとの極限を考えるとである。 が有限値であり でないためには である は存在してはならない。加えて、 である。したがって、主部は有限項であり、 は 位の極である。
-
が真性特異点であるとする。このとき、主部が無限項であるので、任意の正整数
に対して
の項ごとの極限を考えるとである。主部が無限項であるので、ある で であるものが存在し、極限は発散する。逆に、任意の正整数 に対して が発散するとする。このとき、ローラン展開においての項ごとの極限を考えるとである。極限が発散するためには、ある で であるものが存在しなければならない。これは任意の正整数 について成り立つので、主部は無限項であり、 は真性特異点である。
留数定理
留数
を 上で定義された正則な関数とする。ただし、 は孤立特異点である。 の におけるローラン展開を
と書くとき,留数とは のことであり、 と書く。
主張
を 上で定義された正則な関数とする。ただし、 は孤立特異点である。このとき、留数は以下の式で与えられる。
ただし、 は を囲む反時計回りの単純閉曲線である。
証明
の におけるローラン展開を
と書くとき、ローラン展開の係数は定理より
である。特に のとき、
である。したがって示された。
主張
を 上で定義された正則な関数とする。このとき、
-
が
位の極である場合、留数は
で与えられる。
- が除去可能な特異点である場合、留数は である。
証明
-
が
位の極であるとする。このとき、
と書ける。したがって、である。これは、 テイラー展開であり、テイラー展開の係数はで与えられる。特に のとき、である。したがって、留数はで与えられる。
- が可除特異点であるとする。このとき、主部が存在しないので である。したがって、留数は である。
留数定理
主張
を単連結領域とし、 を 内の有限個の点とする。 を 上で定義された正則な関数とする。このとき、 を 内で各点 を囲む反時計回りの単純閉曲線とすると、
証明
のなかで を囲む反時計回りの単純閉曲線 をそれぞれ取る。このとき、以前示した周回積分の性質より、
である。各積分について先ほど示した留数の計算方法の基本を用いると、
である。したがって、
が成り立つ。
ある領域 について, が定義域全体で正則であり が孤立特異点で極であるとき は$D上の有理型関数であるという。
さらに、 が有理型関数であり、 について として
のように でローラン展開できるとき、 を の 位の零点という。このとき、 とすると なので であることに注意せよ。
まとめると、有理型関数 について、 内の点は以下のいずれかである。
- 極である。点
について
とローラン展開でき、位数 を持つ。
- 零点である。点
について
とローラン展開でき、位数 を持つ。
- 正則であり、零点でも極でもない。
とローラン展開できる。
主張
を単連結領域とし、 を 上の有理型関数とする。 を 内の単純閉曲線とする。 上では特異点も零点もないとする。 を 内の特異点(極)としそれぞれの位数を とする。 を 内の零点としそれぞれの位数を とする。このとき、
である。
実積分への応用
を中心として半径 の円周を上半分を反時計回りに辿る経路を とする。このとき、 のとき、 上の積分が に収束する場合がある。
主張
ある定数 に対して 上で定義された関数 が十分大きな について
を満たすとする。このとき、
である。
証明
なので のとき
である。 同様に かつ のとき
ここで、 に対して であるので、
である。